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緋衣汝香優理★水迷宮

人形作家、緋衣汝香優理のお仕事と日常


沙羅の思い出

  1. 2019/11/02(土) 10:00:00..
  2. 日常
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月日も経ち、こちらも棺桶が少しずつ近くなって来たのを感じてもいるし、沙羅の事を語っておこうかと思った。
読む人も多くはないだろうが、記されなければ消えゆくであろうから。

沙羅を初めて見たのは可淡の銀座での初個展、「幽冥の夢」(記憶は怪しい)展だった。
其れから何度か沙羅の夢を見た。
夢の中のひとつは、なんだかホテルの様な所(立派なホテルではない、ビジネスホテルみたいな作りだった。立派なホテルを知らなかったからかもしれない)を駆け回り、沙羅を探していた。
あちこち探し回って、ふと、とある部屋のバスタブの蓋を開けた。
(蓋、と云っても一般家庭にある様な蛇腹みたいな作りでくるくる巻いたり出来るヤツだ。
今は縁がないがホームセンターなぞで今も売られている代物だ。)
すこうし開くと、水に沙羅が沈んでいた。
水面を透かして見える沙羅は生きながら死んでいる様でもあり、死んでいるのに生きているかの様でもあり、生と死の狭間をゆらゆら漂っていた。
水の中から抱き上げ、帰ろう、と声をかけた。
また、自転車の後ろ籠にばらばらになった沙羅を詰めて一所懸命にペダルを踏んでいる夢もあった。毀れてしまった、なんとかしなくてはと思い詰めて自転車を漕ぎ、着いた先は大学の寮の玄関だった。
なにか、寮監に言い訳して玄関を突破しようとしていた。
其の夢を見た頃にはもうとうに寮住まいではなかったのだが。
何度かこんな様な夢に見て、遂に沙羅を手に入れたのだった。

昔、人形のムック本に小さく載っていた人形の写真を見て、可淡の名は胸に刻まれた。
其れ以来、いつか、と思っていたものの、正直、お金はないし、買えるとは思えなかった。
札幌の人形屋佐吉で見た金髪碧眼の子も憧れだった。
何体か買える訳でもないと思うから、ほぼ同じ大きさの黒髪碧眼の子と迷ったのだが、結局夢が決め手になった。

吉祥寺PARCOの個展では初の植毛少女がいて、悩ましくはあったがやはり沙羅に決めた。

日野のご自宅迄受け取りに伺ったのは忘れない。
実は只、遊びに伺っただけで受取りに行った訳ではなかった。
高校時代の友人とふたりで訪れたお宅は、当時の夫君の天野翼氏の設計によるとてもお洒落な邸宅で、どきどきした。ガウディに影響を受けた翼氏の設計は窓や玄関扉などが有機的な曲線で構築されていて素敵だった。モリハナエビルの地下にあった佐吉の店の扉が翼氏によるものだったのを覚えている方もいらっしゃるだろう。
玄関脇に飾り棚があり、可淡の人形が飾られていたと思う。
初めて創ったという人形や、猫や鳥、兎の人形を見せて貰った記憶がある。
あまり仕切りのない間取りで、子供が大きくなったら二階部分を増設する、との事で太い梁が渡ってはいるが、殆どのスペースは天井高く吹き抜けになっていた。
白いスペイン風の塗り壁に高い天井で、美しいアンティークの家具が設えられていた。
階段があって二階にひとつ部屋があり、其処には階下が見渡せる様な窓があった。
(随分昔で、記憶違いもあるかもしれないが)
当時の美術手帖に載ったアトリエはリビングの奥にあった。
正にアンティーク、と云える足踏みミシンが現役だったのも格好良かった。
後に可淡は翼氏と離婚したが、当時、未だ若かった私には翼氏設計のお宅は憧れの生活に見えた。

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昔の美術手帖

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可淡のアトリエと制作中の人形
左側の子が迷った黒髪碧眼の子。
右に下がっている2体のうちのどちらかが沙羅だろうと思う。
横顔の感じから首だけでぶら下がっている子の様に思える。

お茶をご馳走になり、お喋りして、帰ろうとすると、折角ふたりいるのだから持って帰れと、沙羅を渡された。支払いは半分も済んでなかったと思う。
そんな状態で手渡されるとは思ってもみなかったので眼を白黒させたが、信頼された様に思い、嬉しかった。
其の場で布でざっくり包んで手渡され、ふたりで抱えて帰ったが、電車での奇異な視線を覚えている。全体を布で包んで要所要所を紐で縛った、其れは正にヒトガタで、見えない所為で更に死体めいて見えた。
まさか堂々と電車で死体を運ぶものなぞいる訳はないけれども。

そんな風に沙羅は私の家にやって来て、一緒に暮らす様になった。

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沙羅は彼女の娘さんに一度退治された事がある。
娘さんが幼い頃、友達に遊びにおいでと誘ったら、○○ちゃんちにはオバケがいるからヤダ、と云われたらしい。
それで娘さんが、じゃあ、やっつけに行こう!と云って友達と一緒にやっつけたそうだ。
其のオバケが沙羅で、貌を打たれ傷になったのを直したとの事で、お値段は随分引いて貰った。      
以来、何度かの引っ越しを経て此処にいる。
いつか私が消え去っても誰か大切にして下さる方がいるだろうか?
もう随分とぼろぼろだけれども、彼女は死にはしないのだから。
私の創った人形もあるし、死後、誰かお任せ出来る人がほしいと思っている。



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